比嘉劉輝と養鶏場(SS)
 
「まったく、ながみ藩国には足りない物が多過ぎる……」
 ぶつぶつと文句を言いながら歩く人影が一つ。
 大きなカバンに大量の書類を詰め込んで、えっちらおっちらと廊下を進む。
「燃料も資源もないし、防空能力だって頭打ち。そもそも陸戦能力だって足りてない。そして何より……」
 カバンの中から書類を一つ。表紙にはながみ藩国再編計画の文字。
 分厚く束ねた書類をめくり、とある項目に目を落とす。
 多数の食糧が羅列され隣にいくつか数字が並ぶ。藩国国内で生産された食糧各種の生産量、及びそれらの自給率。
 米、小麦、キャッサバ、タロイモ、ココナッツ、パパイヤ、マンゴー、アボガド、バナナ……
 
「なんで野菜ばっかりなんだー! 焼肉が食べたーい!」
 
 
〜 食糧生産地拡張計画の始動 〜
 
 
「というわけで、食糧生産地を新たに整備するための予算の許可を頂きます。異義反論その他は必要ありません」
 摂政の首を締めながら恫喝もとい直談判。瀕死の摂政からハンコをもらう。
 ペタンと打たれる承認の文字。
「よし、次だ次!」
 摂政の亡骸(?)を打ち捨てて、狭い政庁をひた走る。
 
 国民首脳部掻き集め皆に向かって声を出す。
「というわけで牧場作ります。はい決定事項です」
 ……何言ってんだこいつはと、そういう視線を向けられる。うん、別に良いんだ気にしない。
「いや、いきなりそう言われても……」
「うるさい! 僕は肉が食べたいんだ!」
 そして最後は力押し。
 
「皆で森を拓いて土地を確保しましょう。はい作業開始」
 政庁所属の国民を半ば無理矢理引き連れて牧場建築始動です。
 樹木を倒して土を掘り、地面をならして牧草植えて。
 狭いながらも楽しい牧場。皆の努力で作りましょう。
 そして眼前に広がるは、ささやかながらも……


(画:ながみゆきと
 
 養鶏場。
 
「牛って……言ったのに……」
 
 焼肉食べたい少年の小さな野望は消えました。
 
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 後日。
 牛の放牧場も設置されましたが、


(画:ながみゆきと
 
 闘牛と見まごうばかりの暴れ牛ばかりが揃えられ、乳を搾ろうとした藩王が全治一ヶ月の重傷を負う事故が発生するほどだったそうです。
 比嘉劉輝が焼肉を口に出来る日は遠いのでした。
「ってそもそも乳牛じゃないかー!」
 
 
(文:比嘉劉輝)