ドラケンさん 無名騎士藩国へ行く



”……頭、痛い”
”……あ〜、すまん、今度は気をつけよう”

70707002  頭を抑えて睨む舞踏子と目をそらして謝るドラケンの会話



 連日に勝るとも劣らない賑わいを見せるそこは藩国に空の玄関口、オブシディアン空港。
 聞いて分かるとおり、そこは藩国の王猫であるオブシディアンの名を冠している。でもツンデレな添乗員とかスタッフはそれほどいないのであしからず、である。
 そんな空港は今ちょっとしたお祭騒ぎとなっていた。
 空港の一部は閉鎖され、その周りにはアメショーに始まりアビシニアン・ペルシャ・黒曜が顔をそろえており、さながら軍事パレードのような眺めであった。
 その中心にひとつの人影があった。
「さ〜て、とりあえず歓迎の準備はこれでいいかなぁ〜っと」
 政庁の制服に身を包む彼の名は松本裕也。この国の摂政である彼は、今回この国を訪れるある人物のおもてなしを藩王に頼まれていたのだった。
<にしても、こんなにI=D並べてていいんですか?>
<こんなときに何かあったら……>
 不安げな表情で通信を送ってきたのは戦車兵である静と鷹院であった。仕事を終えて政庁の水辺でのんびりとお茶をしていた二人を見つけた松本が無理やりつれてきたのだ。
「な〜に、そんときゃ他の面子がどうにかしてくれるさ〜」
<果たしてそれを信用というべきか……>
<まぁ……ははは>



 人気の少ない……というか、もはや貸切といえるくらい人のいない飛行機。
 その中に一組の男女の姿があった。
「ねえねえ!窓見て窓!雲がすっごい速さで通り過ぎてくよ〜」
「ああ、そうだな」
 女性……というよりも少女に近いだろうか、窓に顔が張り付かんばかりに窓に張りついて眼前を流れる雲に歓声を上げていた。
 その隣ではラフの格好をした男性がそんな彼女を見て優しげな笑みを浮かべていた。
「あ〜それにしても。まさかこんなところでこの制服が役に立つなんて思わなかったよ〜」
 青い色をした軍服、太陽系総軍軍服をひらひらとめくる女性。
「あ〜まあ、そうだな……あ〜、その……ううむ」
「これのおかげでこんな立派な飛行機にタダで乗れたし〜……ん、どうかした?」
 真っ赤に照れている男性を不思議そうに見つめる女性。
「いや、なんでもない」
「変なの〜……あ、見てみて。もうすぐつくみたいだよ」
 飛行機が高度を落としたことで窓一面雲しか見えていなかったが、それが晴れると眼下にはずっと向こう、地平線まで広がる砂漠。そしてこれから向かうであろう空港と町並みが小さく見えた。



「やっとご到着か……」
<緊張するなぁ>
<てゆうか、俺ら黒曜に乗ってなにすりゃいいんだか……>
「あ〜……まあ、適当に」
 3人がそんな会話を交わしているうちに、無事着陸した旅客機にタラップがつけられ、中に乗っていた乗客が姿を……。

 がごん!

「…………」
<…………>
<…………痛そ>
 なぜか入り口付近で突如女性を肩車した男性は、そのまま出ようとしたが……お察しの通り、飛行機の出入り口はそれほど高くは……いや、一般人が普通に通るには十分な高さは確保されて入るが、人を肩車(と呼ぶのかどうかは分からないが)した状態で出れるほどの高さは無い……というよりも、誰もそんなこと想定して無い。まさに想定外の予想外もいいところである。
 ちなみに言えば、男性の身長がずばぬけて高いため、彼自身屈まないと出入り口から出れなかった。
「あぎゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜」
「……す、すまん」
 声にもならず、女性が出すのもちょっとどうかと思えるうめき声を上げながら、それでも男性の肩から落ちないように必死にしがみつく女性、名を舞踏子という。似た人種にホープと呼ばれる者たちがいるが、それの女性版であるといえる。
 そして、その舞踏子を肩に乗せている男性、名をカール・ドラケンという。
 名前こそ英国風だが、これでも祖先は日本人である。そして彼ほど黄金の昇り龍の刺繍の入った黒服が似合う人間も、そうはいないであろう。そんな人物であった。
 ちなみに、なぜ舞踏子を肩に乗せたのか。それは多分誰にも分からないことだろう……乗った舞踏子本人含め。
「ええと……そうそう。ようこそ無名騎士藩国へ」
 気を取り直して、ばしっと敬礼を決める松本。
 その後ろで2機の黒曜が小銃を構えながら敬礼をして見せた。
「ああ、いや……ありがとう。俺はカール・ドラケンだ。よろしく頼む」
 律儀な性格ゆえか、または騎士道が命じるのか……まあ、それは定かではないが舞踏子を肩に乗せたまま、組んでいた腕をといて器用に敬礼を返すドラケンであった……とりあえず、顔の横でぶつけたおでこを抑えながら睨む舞踏子から目をそらしつつ。


文:ナナシ


L:カール・ドラケン = {
 t:名称 = カール・ドラケン(ACE)
 t:要点 = 腕組,金の昇り竜+黒服,眉毛,ずば抜けた長身
 t:周辺環境 = 肩に舞踏子