F級フレームは第6世界において最多量産された同名のベストセラー人型機動爆雷=”人形”を改装したラウンドバックラーである。日本月版の士翼号、そのフルアーマー版である希望号など派生機も多く生み出されている。
 全長9m、重量28t。

 非常に製作工数(製作作業時間)が多い機体であるが、BALLSによる莫大な生産力を背景に60万機以上が製造され、その生産数の多さから予備部品の調達がしやすく整備性に優れるという利点を持っている。この製造数の多さからほぼ全ての整備士が整備経験をもっており、目をつぶっても整備できたとすら言われる。余談であるが、夜明けの船でヤガミ・ソーイチローが搭乗していた士翼号は中古機から「アタリ」のパーツを選び出して組み上げたスペシャルモデルであり、カタログスペックを上回る性能を発揮したという。

 基本性能は高く、後に重攻撃型人形/RBのH級フレームや新型主力機のJ級フレームなどが登場した後も多く使われた。アイアン・ソブリンなどは3機続けて士翼号に乗っていたという話があるほどだ。J級やI級など最低接触戦争後期に登場した新型フレームはハンドメイドに近い少数量産モデルであり、カタログスペックは高かったが、額面どおりの性能を発揮する機体は稀だった。それに対してF級は原型がオートメーション化された空前の大量産モデルであるために部品精度が良く、性能のばらつきが少なかったのである。

 機体制御機構としてBALLS1機/猫士1匹を搭載、基本的に無人機として運用される。シールドが電波、音波などあらゆる情報伝達をシャットアウトするために無線誘導は困難であり、シーホースと呼ばれる小型潜水艇、あるいは母艦/基地からケーブルを伸ばし、首筋のコネクタに接続することで有線制御される。有人タイプも少数存在するが、その場合もコンピュータ・ヒューマンが操作する場合が多く、ヤガミの士翼号のように人知類が搭乗可能な仕様の機体はごくわずかであった。

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 無名騎士藩国で生産されたバージョンでは各部の近代化改修が行われており、最新兵装に対応するよう各部ステーションが改良されている他、有人仕様では最新機種である流星号(L級フレーム)と同様の新型タイヤキコクピットが採用され、パイロットへの負担を減少させている。これに伴ってアビオニクスも刷新され、トポロジーレーダー2など最新型が搭載された。
 反面、装甲形式などは総軍仕様に揃えられ、可能な限り部品を共用できるようにされている。これは第6世界現地での補充部品調達なども考慮したためであり、単機性能向上の可能性は流星号改に譲って整備性の維持に注力された。

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 基本構造は単殻式。装甲はシールドがあるためにとくに重視されていない。
 エンジンは対消滅反応炉式ウォータージェットで、頭部の給水口から水を吸入、反物質を少量投入して対消滅、高圧水蒸気を生成・噴出させて推進力とする。一般にRBはシングルエンジンであるが、F級フレームではツインエンジンを採用。これによって整備性は悪化するものの、高出力と軽快な運動性を得ている。

 固定武装は両腕の絶対物理防壁発生機関のみ。この次元切除システムによって水抵抗は数十分の一に極限され、速度にして数百km/h程度を出すことが出来る。防壁自体に周囲の水が吸引されるので、これも推進力として作用する。このシールドはあらゆる情報・物体が透過不可能である上、RBの速度は水中音速の半分ほどに達するため、ソナーを使用する意味がほとんどない。このため、RBドライバーはESPじみた未来予測によって行動することになる。

 燃料は10gほどの反物質。増燃料槽はない。絶対物理防壁が大量のエネルギーを消費するため、シールドを使用しての最大稼働時間は2時間ほどである。緊急時などシールドを使用しない場合は10時間以上の活動が可能だが、当然ながら高速移動は不可能となる。

●Sカトラス
 絶対物理防壁を延長、白兵武器として動かすためのオプション装備。腕部先端のステーションに装備される。伸びた防壁がカトラス型になるためこの名がある。これ自体に破壊力があるわけではない。Y型魚雷発射管との同時装備も可能。

●有線遠隔操作式水中銃
 小型爆雷投射機、カトラス、機関砲を兼ねるオプション武装。腕部ステーション装着時はカトラス、有線制御で後方攻撃用爆雷投射機として機能する。シールド使用時は前方に対して射撃を行うことはできない上、腕部はシールド制御で使用するために有線遠隔操作型とされている。

●Y型魚雷発射管
 流星号改で採用された新型オプション武装。ステーションの改良によって装備可能。コネクタを挟むことで従来の魚雷発射管も装備できる。弾種としては短魚雷、長距離魚雷、各種機雷等。

『コントロール艦からの操縦にロマンなんかあるのか?』
『当然、あるね』

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 無名騎士藩国に限らず、アイドレス世界tera領域全てにおいて、メカとは基本的に有人の搭乗兵器を指す。
 人が機械に搭乗し、力を一つにして戦うからこそメカは強いと根強く信じられており(そしてその信仰は、確かに確実な結果を残している)、直接搭乗以外の形での操縦は、ほぼ認知されていないと言ってよかった。
 例外として無人機である”人形”、NKiD−06ヘリオドールがあるが、これについても直接操縦で動かされる機体が最低1以上あることが前提となっており、無人機版の性能が抑えられていることもあって、有人機としての印象が強い。

 『搭乗兵器=有人機』は、アイドレス界における常識に近いものであると言える。

 だが、そんなルールもt:も、別に存在するわけではない。
 アイドレスは自由で、そしてメカには、まだまだ沢山の可能性があった。
 だから、例えばこれは、その可能性の一つである。



 F級フレーム、第六世界群の絢爛世界で大量に生産されているこの兵器を無名騎士藩国仕様として再生産することが決まったのは、絢爛世界における火星でのイベントや戦闘が発生する事が予想されたからというのが一つと、RBという特殊な性質を持ったメカを研究する事が、今後のアイドレス界の戦局を左右する可能性もあると読まれたからである、と思われる。

 アイドレス世界tera領域にはまだRBそのものが少なく、一部のワンオフ機を除けば存在しないと言っていいレベルだった。
 ARは低く、全体的に見ると性能的にも特別高いというわけではないRBではあったが、シールドの存在やパイロット能力を活かした対空戦など、未知の可能性は多数眠っているのである。
 その開発の入り口となるF級フレームが注目されるのは、ある種自然な事ではあった。

 とはいえ前述の通り、F級フレームは(絢爛世界において)大量に生産された機体であり、そのバリエーションも非常に多岐に渡っている。
 大宇宙戦争時代だった絢爛世界とはいえ、生産量60万を数えるとなれば、その実態を全て掴むのは想像においてすら難しいだろう。
(厳密には、F級の元となった人形が60万機生産されているのかもしれない。だが、量産数の多さはRBへの改装数の多さにも繋がることが予想され、部品の共用も考えれば、F級そのものが60万機生産されたと考えても大よそ問題はなさそうだ)

 となると、問題がまず一つ上がってくる。
 どのバリエーションを採用するか、また、仕様変更するならばどうするのか、である。
 仕様変更に求められる要件は多数あったが、まずはそれらを最も満たし易いベース機の選定が必要となる。
 無名騎士藩国の兵器開発チームの一つは、膨大な資料の山と格闘することとなった。

 結果として、ベース機は実に無難な、太陽系総軍仕様の機体が選ばれている。
 これには、生産数の多い仕様をベースに使う事で、パーツの現地調達などを簡易にする目的もあったが、同時に、特別仕様の機体をベースにしなくても、F級の性能は安定して引き出せると判断されたからでもあった。F級の基礎設計の優秀さの証左であろう。


 話は戻る。
 太陽系総軍仕様に限らず、F級フレームをはじめとしたRBのほぼ全ては、機体本体にパイロットが搭乗することはない、外部からの優先制御を行って操縦する機体だった。
 機体そのものの操作を直で行わず、コントロール用の小型艇や母艦にパイロットがいるのである。
(ほぼ全て、と述べたとおり、例外として有人仕様は存在する。そして、無名騎士藩国でも有人仕様機は生産されるのだが)
 だからこれは、『搭乗兵器=有人機』の常識から外れた機体ということになるわけで、当然、内外からも異論が上がりはした。

 戦場の最前線で機体に搭乗して戦う、というのは、パイロットの身の安全などの観点から言えば、決して効率のいいものではない。
 だがそれでも、戦場に身をおく者として、機体と共に前に出たいと思う者は多数いた。
 それは人の傲慢さかもしれなかったが、確かに人の心を強く打つ動機ではあっただろう。
 外部コントロールによる無人機に抵抗を持つ者の意見は、人のあり方として正しいとも言える。

 しかし。やはりそれは絶対ではない。
 人としての、戦争に参加する者としてのあり方に、絶対はない。最善を求める中で、1点のみに囚われすぎてはならない。
 メカのあり方についてもそれは然り。
 人を生かすためのシステムは、戦場での死亡率を下げることによって、よりよい未来を築くために考案されたものだ。
 一パイロットであっても一人の人であり、アイドレスにおいては数が力である。
 命を賭けるから尊いのではなく、何かを成そうと力を合わせるから尊いのだと、皆が信じている。
 であれば、メカの新たなるあり方の一つ、F級フレームの可能性は、信じられてよいものではないか。

 既存の常識からあえて外れた選択をする事で、新たなる道、新たなる可能性が開けるのであれば。

 藍翼号。ウイングオブアクアマリンの名を与えられたそれは、翼持つ海の護りとして、人々の明日を照らす、夜明けの輝きの一つである、と言えた。


【藍翼号(有人機仕様)のテスト記録】
日時:アイドレス標準暦81708002
天候:快晴 気温:32.5℃
報告者:キギ(テストパイロット)

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 ここは、無名騎士藩国のアレキサンドリア港に近い海軍メガフロート。このメガフロートの一区画には水上演習場が設置されており、通常なら水陸両用のターキッシュバンの演習に使われることが多い。しかしながらここ数日はいつもと少々様子が違っていた。というのも、無名騎士藩国で開発中のF級フレーム藍翼号のテストが連日連夜行われていたからからだった。T12初頭、火星進出における主力機として配備される予定のF級フレームの開発。演習場の片隅には整備テントが張られ、メガフロートに配備されていたターキッシュバンもチェイサーとして動員されている。

F級フレームのような本格的な量産型RBはこれまで無名騎士藩国にも共和国テラ領域のどの国にもなかったRBである。化け物の巣窟といわれる絢爛世界の火星に進出するにあたり、ターキッシュバンのみでは戦力不足と判断されていたものの、ほかに水陸両用で使える量産型RBは今まで存在しなかった。そこで絢爛世界で製造されたF級フレームの情報を元に藩国独自の新型RB開発が提案されたのだった。現在このメガフロートでテストしているいくつかの機体は、無名騎士藩国が造った最初のF級フレームである。新型のテストは機体の限界を見極めるために非常に特殊で過酷な条件のもとでテストを行うからたいてい危険がつきまとう厄介な仕事だったが、それだけにやりがいのある役目でもあった。

テストパイロットの一人であるキギはパイロットスーツに身を包みながら、演習場をぼんやりと眺めていた。ついさきほど幾度目かの動作試験を終え、その結果を元に何人もの猫技師がモニターとにらめっこしながら機体に調整を施している。キギはその調整が終わり、テストが再開されるのを待っていたのだった。
「それにしても藩王さまもずいぶん無茶をいうなあ。」
キギは苦笑しながら、藩王GENZの言葉を思い出す。つい先日、主だった藩国の面子に召集をかけたメカ好き藩王は力強くこう宣言したのだった。

『F級フレームを造る!今すぐに!』

『えええ!?今すぐ!?』という、みなの反応が一様に驚きと困惑だったのはまあ無理もない。しかし、F級フレームを緊急で必要とする止むを得ない事情もあり、現在は国の総力を挙げ急ピッチでF級フレームの建造を進めている。もちろん技師や整備士、パイロットなど、RBに関連するほぼ全ての人員が総動員されていた。キギの場合、着用するアイドレスの感覚の高さを見込まれてF級フレーム有人仕様のテストパイロットの一人として選ばれたのだった。選出された理由として、高い感覚の評価値であれば機体が何かしらおかしな挙動をしたときにそれを正確に感知できるだろうとのことである。また、長年I=Dパイロットとしていくつもの戦闘を潜り抜けた豊富な操縦経験から、試験中に起きたトラブルを迅速に解決できるだろうとの期待もあったらしい。すでに連日のテストの繰り返しによって一連の起動実験や簡単な動作試験は終わり、今回はその仕上げとしてより実戦に近い形でのテストを行う予定になっていた。

「用意できましたにゃー!実戦形式の動作テスト、始められますにゃ!」
猫技師が手を振って呼びかけてきた。ぼんやりとした意識が引き戻され、休憩が終わる。
「さて、いきますか」
軽く伸びをして体をほぐし、いつものようにテスト機のコクピットに滑り込む。タイヤキ型コクピットの中でトポロジーレーダーなどの周辺機器を確認し、エンジンスタート。シート越しにエンジンの振動が伝わり、新型の対消滅エンジンが順調に起動していることを教えてくれた。テストとはいえ、実戦に近い形式でのテストはこれが始めてなので、さすがに緊張する。
「そろそろ始めるにゃー。カウント10秒前!」メインモニターに映る猫技師が秒読みを開始する。
「8、7、・・・3、2、1、スタート!!」

戦闘が開始される。まずはレーダーの確認。トポロジーレーダーに映る機影は11。そのうち青2つは味方機、残りの赤9つ全ては敵性RBという設定だ(敵味方ともにテスト機以外はどちらもRBを模した自動人形である)。クリア目標は全ての敵RBの撃破。雑念を追いやり、テストに集中することにする。モニターに映る敵RBは3機、こちらに真っ直ぐ向かってきている。レーダーを見ると他の敵機は別の味方機に向かっているようだ。そちらは任せていても大丈夫だろう。目の前の敵を片付けてからでも十分に間に合うと判断する。
「シールド最大展開。戦闘を開始する」スロットル全開。一気に速度を上げ、シールド突撃。
シールドは光学・電波・磁場・重力・音波系センスをシャットアウトするため、勘と先読みで敵の位置を予測するしかない。機体の両腕を動かしながらシールドを傾けて機動を曲げ、敵とのすれ違いざまに剣鈴を叩き込んで1機を両断。残り2機も未来予測とシールドを駆使することでターンごとに撃破することができた。目の前の敵を片付けてほっとしたのもつかの間、まだ敵は残っている。味方を援護するため、再び加速を開始した。

技士たちは技師たちでモニターにかじりついていた。「敵RB型自動人形の撃破数、目標到達まであと5体にゃー。」猫整備士の撃破数カウントの声が海軍メガフロートに間借りした整備テントに流れる。
「後3体・・・2・・・ラスト1体、撃破にゃー!」
「目標クリア、テスト終了にゃー」
整備テントの中で猫技師や整備士たちの『やったにゃああああ!』という歓声が響く。予想以上の仕上がりに猫たちはみんなで喜んだあと、試験を終えて整備テントに戻ってきたテスト機と、コクピットから降りたキギのもとにやってきて、口々に「おめでとうにゃー」とか「やったにゃあ」などと祝福してくれる。これで藍翼号の開発の全てが終わったわけではないが、今回の実戦に近い動作実験も含めた種々の動作試験を終えたことで、藍翼号はようやく一人前のRBになったといえる。
「化け物だらけの絢爛世界でも、この藍翼号ならやれそうだ。」
とキギは思った。火星奪還に向けて、ほのかな光が見えた気がした。

イラスト:獅進,、冴月  文:GENZ、赤峰、キギ 超辛協力:玄霧弦耶

L:RB・F級フレームの開発 = {
 t:名称 = RB・F級フレームの開発(イベント)
 t:要点 = 機体,足一体型,一般性能要求{
 F級フレームは太陽系総軍が汎銀河大戦の主力として使っていたRBである。大変に製作工数の多い機体だったが、性能は高く、後の新型が出た後も、このF級を使うものがたくさんいた。全長は9m、ラウンドバックラー(絶対物理防壁)の展開が出来る。

 t:周辺環境 = 海
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *RB・F級フレームの開発のイベントカテゴリ = 藩国イベントとして扱う。
  *RB・F級フレームの開発の位置づけ = 生産イベントとして扱う。
  *その国用のF級フレーム(乗り物)を作成できる。
 }
 t:→次のアイドレス = なし


L:藍翼号 = {
 t:名称 = 藍翼号(乗り物)
 t:要点 = 機体,足一体型,複数機
 t:周辺環境 = 海中
 t:評価 = 体格12,筋力13,耐久力13,外見4,敏捷14,器用7,感覚0,知識6,幸運6
 t:特殊 = {
  *藍翼号の乗り物カテゴリ = RBとして扱う。
  *藍翼号は水中専用である。地上で短時間(7AR)行動することもできる。
  *藍翼号はパイロット1人+猫士を載せても良い。(もしくは猫士1だけでもよい。この単独猫士は性能評価二倍で扱う。)
  *藍翼号は水中遠距離戦闘行為ができ、この時、これら攻撃判定は評価+3される。
  *藍翼号は水中白兵戦闘行為ができ、この時、攻撃は必ず成功する。
  *藍翼号は水中防御行為ができ、この時、防御は必ず成功する。ARを3使う。
  *藍翼号の人機数 = 5人機として扱う。
  *藍翼号のアタックランク = ARは10として扱う。
 }
 t:→次のアイドレス = RB・士翼号の開発(イベント),RB・H級フレームの開発(イベント),未来予知者(職業),シールドシップの開発(イベント)