西の地平線に砂煙が上がる。戦場となる平原に敵軍が侵入してきたのだ。まだかなりの距離があるが、地響きは既に自陣まで届いていた。物見から合図が出され、伝令が指揮官騎の元へ走る。

 指揮官騎が儀仗を振ると、布陣した100騎の人騎兵『ガンダルヴァ』が一斉に動き出す。前衛の60騎は騎槍と手斧を握り、後衛に位置する60騎は弓を携え、腰に手斧を括り付けていた。

 操縦槽内では、操縦者が敵軍の人騎兵を捉えていた。機種は『ケンタウロス』。ガンダルヴァと同じく馬型の下半身を持つ人騎兵である。装備は弓と騎槍、剣と見て取れる。どうやら武器の種類では差はつかないようだった。

 鬨の声が上がる。敵味方の距離は既に1000mを切った。人の感覚で言えば100mほどだ。

 前衛部隊が歩法を切り替え、足を速めた。一機の胸にある女性めいた顔が呪文を唱え、その内腕がめまぐるしく印を組み替える。すると、見る間に騎槍に異変が起こった。穂先が激しく燃え上がったのだ。他の機体にも同様の動きが起こる。時をおかず全騎の騎槍が燃え上がり、氷結し、あるいは雷を纏った。いくつかは白い輝きを放つ。騎槍に焼き付けられた呪紋が励起され、術者の唱える<付与>を拡大再現していたのである。

 後衛部隊の構える弓矢に目を向けると、鏃にも<付与>による属性付加が行われている。さらには弦を引き絞る腕が一回り大きく膨れ、同時に弦自体が光を発した。<身体施呪>によって機体の筋力が強化されると共に、弦の張力までもが強化されていたのだ。

 時を同じくして両軍の後衛から矢が放たれ、互いの前衛に着弾する。だが、同規模の機体と弓を使っているにも関わらず、被害の差は歴然だった。ケンタウロスの矢は、ガンダルヴァの胸の顔が付与する<呪盾>によって強化された手斧、そして小規模の魔力障壁により弾き返された。運良く命中した矢も、鎧に描かれた<矢返し>の呪いに逸らされる。それに対し、ケンタウロスの機体は<必中><貫通>の呪いがかけられた矢によって大きく抉れ、中には燃え上がるものや鎧が凍結して砕け散るものもあった。

 凄まじい地響きと共に、鋼を噛み合わせたような、が、という音が響く。前衛のガンダルヴァがさらに加速し、ケンタウロスと激突したのだ。槍が交錯し、互いの機体に突き立つ…と見えたが、力を失ったのはケンタウロスだけであった。ガンダルヴァの騎槍はケンタウロスの胸板を貫いていたが、ケンタウロスの騎槍は不可視の障壁に逸らされていたのだ。

 そこかしこで同じ状況が発生、ケンタウロスが倒されていく。だが、敵はいまだ多く、戦いは始まったばかりだった。






人騎兵「ガンダルヴァ」は、にゃんにゃん共和国tera領域において初めて開発された量産型の人騎兵である。

 帝國に立ち後れること4ターン、無名騎士藩国の主導で各藩国の協力を得て開発、共通機として採用された。
基本的な技術は松井いつか氏所有の人騎兵「妖精号」の解析から得ており、基本的なコンセプトもこれに近い。

基本的な性能要求は

低物理域での稼働



高速突撃能力、機動力の確保


白兵戦〜中距離戦能力



ある程度の防御力



可能な限りのコスト低減


といったものであった。この要求に対し、以下のような仕様が提案され、採用。機体の設計が開始された。

 基本戦闘スタイルは騎士型とする。



 通常の腕の他、印を組むための副腕を備える。また、胸部には詠唱のためもう1つの顔を持つ。



 操縦者1名、魔法使い1名を搭乗させる。
 操縦者席は通常の椅子型とし、操縦桿、ペダル、目からの映像を投影する映像板を備える。また、映像板を引き上げると裏に覗き穴があけられており、直接視認によって戦闘行動を続行することができる。
 魔法使い席には結跏趺坐を組むことの可能なスペースが設けられ、機体(胸の詠唱用頭部及び結印用副腕)と同調するための仮面を備える。



 四足歩行によって機体姿勢を安定させ、高速走行することで陸上における機動力を得る。基本制御は操縦者側から行うが、魔法使い側からの制御も可能。


 搭乗する魔法使いに付与・強化の魔法を行使させることで、機体性能を底上げする。このため魔法使いに同調して魔法を詠唱する面及び印を組む腕を増設する。魔法使いの疲労を抑えるため、瞬間移動や火球、電撃といった強力かつ消耗の激しい魔法は行使しない。これによって継戦力を高め、安定した戦闘力を引き出す。



 高速性を重視するためにあまり強力な装甲は装備せず、盾も持たない。緊急の場合は小規模の魔法障壁によって防御を行う。どうしても脆弱となる股間や関節部は防御呪紋が描きこまれた布垂れでカバーされて最低限の防御力を確保している。



 標準装備として中距離・対空戦用の弓、突撃白兵戦用の騎槍、白兵戦用の手斧を持つ。これらは呪紋が予め書き込まれており、機体側から付与魔法をかけることによって活性化、<貫通><切断><燃焼><凍結><帯電>といった効果を発揮する。



 機体は全体的に大振りの部品で構成されており、極力分割を少なくすることで軽量化しつつ強度を上げるという発想で設計されている。



 設計・製造においては特に魔法使いの多い森国系国家からの協力を受けたが、これは近年開通した環状線の恩恵に依るところが大きい。また、技術の混合を避けるために特に機械系先進技術は導入されず、古式に則った方法で製造されている。



武装対比
イラスト:獅進
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