遠距離攻撃を重視した支援I=Dである、黒曜こと“NKiD-03 オブシディアン”、 大量投入により高評価を導き出す機体であり、“ヘイムダルの眼”のパーツの一つでもある、“NKiD-06 ヘリオドール”や、Fからの技術提供により完成した高機動遠距離砲戦用機体、青の7号こと、“NkiD-07 マクル・フロンティエーレ”、と言った名機を生み出した、無名騎士藩国の工房、そこは活気にあふれ、そこにいる者たちの機械への愛により、無名騎士藩国の平均気温より数度気温が上がっていた。

その高気温の中心である、ヘッドセットをつけ、涼しそうな長袖の服の上からエプロンを着、帽子を片手に持った男、彼は部下にテキパキと指示をしながら、分解されたI=Dに近づき、そのI=Dのパーツを一つ一つ確認していく。
「このパーツは使えるな。このパーツは、微妙だな。これは…」
そう言いながら、「使える」パーツと「使わない」パーツを選別していく。
「おい、このパーツ持ってけ!」
彼は部下に指示を出し、クレーンに吊るされた組み上げられそうなI=Dのほうに「使える」パーツを持って行かせる。
彼は時折泣きそうになる。
分解されたI=Dはまだ動けた。壊れたわけでもなく、ただ試作機だから、もっと良い機体を作れるから、そんな理由で分解されてしまう。その事が悲しかった。
だが、そのI=Dのパーツは次の機体で生きていく。
そのパーツは彼の手によって新たなI=Dに組み込まれ、生まれ変わっていく。
彼は自分をここまで導いてくれた機械のために、心は熱く、手先は機械のように冷静にI=Dにパーツを組み込んでいく。
部下たちはそんな彼を見て、こう言うのだ。
「主任は、『俺達がマシンになり、機械の意思を代弁すれば、より強くしてやれる。お互いがより良くなれる』ってよく言うよな。そんな人だから“マシンマイスター”って呼ばれるんだろうな」
彼らは誓った。自分たちもその場所まで辿り着くことを。


無名騎士藩国には、溶接音や、怒号が響き、常にトラックが往来し、そこらじゅうから油の匂いがする、工房によって構成された工房街が存在する。

工房は“マイスター”という称号を得た職人と、少数の彼の弟子たちにより構成され、特に熟練した職人は“マシンマイスター”と称されている。また、工房では、試作機の組み立て、I=Dのオーバーホール、チューニング、青の7号、流星号改といった機体の製造などが彼らの手によって日夜行われ、街から明かりが消えることはない。

それぞれの工房は独立しているが、互いの技術を高めあうため、定期的に交流会を行い、意見交換や職人たちの機械への愛のぶつけ合いなどが行われている。

弟子たちは師であるマイスターから技術を認められると、マイスターを補佐する熟練工の称号を得、さらに技術を磨き、藩国の厳しい審査を通過するとマイスターとして認められ、新たな工房を与えられる。
無名騎士藩国では、当初審査の厳しさから、マイスターの数が少なかったが、ターン11となった現在、職人たちの技術が向上し、マイスターの数も増え、様々な名機が世に出されようとしている。
 
 ある工房についての話をしよう。
そこは、一般的な工房の例に漏れず、一人の職人とその弟子によって構成されていた。
唯一つ、一般的な工房と違う点があるとすれば、その職人が弟子たちから“マシンマイスター”と呼ばれていたことであろう。
そして、そこの工房には標語があった。
『人にして機械となれ。我らは機械の意思の代理。聴け機械の声を。与えよ更なる力を。』
弟子たちは皆この言葉を胸に刻み、高みを目指すために、日々技術を研鑽している。

彼らは、心から機械を愛し、機械に触れることを一番の楽しみとしていた。
そのことが見て取れる例がこれである。

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『乾杯!』
工房に喜びの声が溢れる。
青の7号のロールアウト、それを祝した宴会である。
そこには、やりきった者達しかいない。皆、新しい兄弟が生まれたことを心から喜んでいた。
今日の夜は長くなる。と、誰かが言った。

だが、宴の盛り上がりが最高潮に達した頃、工房に激震が走った。
「黒曜2の仕様が完成しました!」
全員の視線が、主任のほうを向く。
主任は、持っていたジョッキを机に置き、「全員顔洗うぞ!宴会は黒曜2完成までお預けだ!!」と、大声で叫んだ。
弟子たちは、待っていましたとばかりに、「うす!」と声を合わせ叫んだ。その声には喜びが混じっていた。
その日の夜は確かに長くなった。

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彼らは機械を愛し、機械もそれに応えた。
この工房から、マイスターの呼び名の一つである“マシンマイスター”が生み出され、幾人もの藩国史に残るマイスターが世に輩出された。



その日は、記念すべき日であった。
“マイスター”の称号授与式。
新たな“マイスター”が世に生まれる日であった。

無名騎士藩国政庁前、そこには十機の式典用黒曜が立ち並んでいた。
新たに任ぜられる“マイスター”の師が弟子の門出のために手ずからチューニングし、外装を替えた黒曜であった。
いつもの作業着ではなく、儀礼用の礼服を身に纏った緊張した面持ちの男。その男にこれまた儀礼服を着た年を取って男が近づく。彼は若い男の肩を叩き、政庁前に用意された来賓席の末席に座った。
そして、式が始まる。
緊張していた男は、その緊張を解き、背筋を伸ばし、まっすぐ藩王のもとに向う。
藩王により“マイスター”であることを表す勲章が胸元につけられる。
来賓席と、客席から盛大な拍手が鳴り響く。
“マイスター”となった男の師がうっすらと涙を流した。
彼は“マイスター”の一人となった。だが、これで彼の道が始まったのではない。これから、彼の道は始まるのだ。
式典用黒曜から祝砲が放たれた。彼が新たなる道を進むことを祝福するかのように。新たな兄弟の誕生を喜ぶかのように。



無名騎士藩国はI=Dの国である。それゆえに、子どもたちの中にもメカ好きは多かった。
とりわけ、T11現在、藩国独自のI=Dの子供たちからの人気は、ヘリオドールと、青の七号が争っていたが、それらの人気を遥かに上回るメカが存在していた。
そう、バンバンジーである。

ここは、工房街に居を置くある工房。
いつも鳴りやまぬ音が、このときだけは工房から消えていた。それは、昼の休憩中であるからだった。
組み立て中のI=Dの前でたばこを吸う“マイスター”。弟子から何度窘められようと、昼休み中くらいいいじゃねえかと、吸うことをやめることはなかった。
ぼうっと、機体を眺めていると、聞こえてくる足音。
毎日のように、工房に遊びに来る子供であった。
彼はI=Dが好きなようで、毎日I=Dをそのキラキラ光る二つの瞳で見つめていた。
「おお、坊主今日も来たか。そんなに好きか?こいつが」
少年は力強く首を縦に振る。
そんな少年をみて、いつも厳しい顔の“マイスター”は表情を優しくする。
「坊主はこの国だと、どの機体が好きなんだ?七号か?ヘリオか?それとも、黒曜、アビか?」
「みんな大好き!でも、一番はバンバンジー!!」
そんな少年を見て、彼は笑う。
「そうか、そうか!バンバンジーか!やっぱり、いいよなぁ!そうだ、坊主ちょっと待ってろ」
彼は立ち上がり、どこかから30cmくらいのフィギュアを持ってくる。
「おじちゃん、それ…」
「ああ、バンバンジーだ。やるよ」
「おじちゃん、ほんとにいいの!?」
「ああ、いいよ。大事にしろよ」
「けど、これ。どこで売ってるの?」
「どこにも売ってないさ。俺の手作りだからな」
「おじちゃん、すごい!なんで作れるの?」
「そんなもん決まってるじゃねえか。俺が“マイスター”だからだよ」
昼休みの終了を告げるチャイムが鳴る。
「ほれ、そろそろ帰れ。仕事が始まるからよ」
「うん、わかった。また明日ね!」
そう言って少年は帰って行った。大事そうにバンバンジーを抱きしめながら…。



高位西国人+マシンマイスター+チューニングマスター+名整備士

L:高位西国人 = {
 t:名称 = 高位西国人(人)
 t:要点 = ゆったりした服装,灰色の髪,装飾品→高位西国人継承
 t:周辺環境 = 王宮,ソファ,大きな団扇→高位西国人継承

L:名整備士 = {
 t:名称 = 名整備士(職業)
 t:要点 = 帽子,部下→本文
 t:周辺環境 = クレーン→本文

L:チューニングマスター = {
 t:名称 = チューニングマスター(職業)
 t:要点 = ヘッドセット,涼しそうな長袖→本文
 t:周辺環境 = クレーン→本文

L:マシンマイスター = {
 t:名称 = マシンマイスター(職業)
 t:要点 = 組上げられそうなI=D,分解されたI=D,エプロン→本ページイラスト、本文
 t:周辺環境 = 工房→本ページイラスト、本文