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 無名騎士藩国には、童話めいた伝説がある。

 むかしむかし。
大地が天変地異に襲われてたことがありました。猫や兎や猪や犬たちは、大地から天界へ逃げようと、砂漠を渡り、その中央に座する、天輪の塔を登りました。
 しかし天輪の塔は、常に登り続けないと魔物によって塔から落とされてしまう試練の塔でした。天界までは遠く、結局、みんな塔から落とされてしまいました。兎や猪や犬たちは、大地にしたたかに叩きつけられてしまいました。
 しかし、猫は違いました。
軽やかな身のこなしで、すたっと、大地に叩きつけられることなく、無事に着地に成功したのです。

 兎や猪や犬たちはそんな猫を賞賛し、「ああ、なんて猫はすごい生き物なんだろう」と口々に言いました。

 これが「ネコっと空中大回転」と言われる伝説です。
今でも祭事として「ネコっと空中大回転」は用いられてますし、「ぬこサーカス」は娯楽であると同時に、その伝説を受け継ぐもの、祭事の変化したものとしての顔を持っています。

 「どんな失敗をしても、最後が綺麗に決まれば万事円満」という諺の元にもなり、ぬこサーカスでもその精神は息づいてます。
すなわち、空中ブランコ等から落下してしまうのはサーカスしては大失点ですが、「ネコっと空中大回転」を決められれば、観客はその失敗を許し、逆に喝采するのです。

 これを利用したのが、今もって「最高のサーカスぬこ」と呼ばれる、ネコラテン・ネコラスです。
彼はわざと落下し、当時まだ誰も決めたことのない、いや見たこともない「月面宙返り式ネコっと空中大回転」を決めることにより、今でもナンバーワンと呼ばれる程の名声を得たのです。


 現在無名騎士藩国において一番有名なぬこサーカス団は、レイメイ湖畔に本拠を構える「ダザリアン」一座です。多くの団員を抱え、能力も高い。サーカス芸で一旗揚げようとする野心をもった若者が集まることでも有名です。元々多国籍な雰囲気の強い無名騎士藩国にあって、その異国的・無国籍な雰囲気がもっとも強いともいえます。
 藩国においてサーカスは、先の伝説にもある様に、一種の宗教的要素も兼ね備えています。レイメイ湖畔は昔より、祭事、そしてそれが転じたサーカスが繰り返し行われてきた由緒ある場所。そこに本拠を構えられることは、大変栄誉なことです。またサーカス人気の高い藩国においては、随一の観光地でもあります。
 サーカス一座は藩国各地を巡業することもあります。特に大きな戦役があると慰問の為、陸軍基地や軍港へと出掛け、サーカスの技を披露することも、彼らの仕事の一つです。
そして巡業サーカスの中でも一番特異なのは、蜃気楼をバックにしたサーカス劇「騎士団謳歌」です。これは蜃気楼が出た時、かつ、それにサーカス一座が遭遇した時にだけ開催されるもので、祭事に近いものです。大抵の場合観客はおらず、蜃気楼をバックに静かに、サーカス芸の粋を尽くします。これを見れた人は幸運といっていいでしょう。
 が、やはり大型のサーカス施設は移動式では難しい。本拠地は固定式故に、国内最大の施設を有しています。ダイナミックな技や演技、また劇形式の見せ物など、本拠地でなければ見られない見せ物も多く、人気を集めています。立地的にも首都に近く、また砂漠へ続く交易路の玄関口に位置しています。観光地としては国内最大といっていでしょう。

 レイメイ湖畔自体にも、その歴史から由緒ある遺跡・史跡が多いです。サーカス本拠地を中心に、多くの人が集まります。
灰色の髪の西国人のガイドが「天輪ネコの像」の前で伝説や神話を語ったり、サーカスの技の説明をする光景は至る所で見受けられます。またガイドに先導され砂漠のオアシス観光へ出立する光景も日常的なものといえます。出発前、涼しい建物の軒下でガイドの解説の元、砂避けの帽子や日焼け対策の服装に着替えます。そうしないと、砂漠を横断することなどとても無理ですから。
 また土産物屋では「天輪ネコの像」の置物が売られたり、また現藩王になってから一部で大人気の「ふぃぎゅあ」なるものも売られてたりします。サーカスとはほとんど関係のない品まで売られているのは、ここが観光地である点と、首都から近いという理由も大きい様です。

絵:静 文:沙崎絢市


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 t:周辺環境 = おみやげ物屋,ガイド