整備士の中で、「チューニングマスター」と呼ばれる者たちがいる。凄腕の整備士である。しかし「名整備士」ではなく「チューニングマスター」と呼ばれるにはもちろん理由がある。

 とあるI=Dを整備した時。そのパイロットたちからマスターに質問が出た。
「何か強化パーツでもいれたのか?」
「いいや?」
「じゃあ、設定か何かを変更したとか?」
「仕様書どおりに設定してありますけど」
「……」
パイロットたちは回答に不満足そうにして、その場を離れかけ、しかし最後にこう言った。
「いや、別に整備に不満があるわけじゃないんだ。よかったから、何か改良でもしたのかなと思ってさ」
「いいえ?」
「そ、そうか…とにかく、ありがとう」
マスターは立ち去っていくパイロットたちを不思議そうな目で見ていたが、すぐに整備作業に没頭してそのことは忘れた。

 チューニングマスターは、自分の才能に無自覚なことが多い。よく誉められたり賞賛されたりするが、なんでそうなるのかが分からない。普通に整備しているだけなのに。

 理由はこうだ。
 チューニングマスターが整備をすると、「仕様書どおりの性能」が出ることが多いのである。だから本人は無自覚(当たり前)だし、パイロットたちは賞賛する。
 普通機械は、仕様書どおりの性能は100%出てないものだ。それは燃料の質の問題であったり、製造精度の問題であったり、様々だ。仕様書上「巡航時速100キロ」であれば、実際100キロで巡航させるとちょっと無理が出る。なので95キロとかで運用する。
 それが、チューニングマスターが整備すると、100キロでの無理ない運用が可能になる。

 五台同じ機械があれば、五台とも同じように性能が出る。
パイロットが専属のI=Dでも、三人ぐらいでローテーションして使用しているI=Dでも、同じように性能が出る。
 機械の個体差や使用者の癖すらも織り込んで、整備する。おそらく無意識に。
パイロットからすれば、機械の方が自分に合わせてくれているような錯覚さえ覚えるだろう。

 結果として、「仕様書通りの性能」で「いつも以上の性能」が出ることになるのだ。




 砂漠の国であるのに長袖を着用しているのは、安全確保の為。金属などの硬いものを扱っていると、ちょっとしたことでも肌は傷ついてしまうものだ。血が出れば本人だけではなく、それが付着した機械にも悪影響が出てしまう。
 もちろん素材にはこだわっている。丈夫でかつ通気性と吸水性が良い物を。安全の為の長袖ではあるが、その為に暑くて作業効率が落ちたり、必要以上の汗で何かを滑らせたりしては本末転倒であるからだ。

 これらヘッドセットなどのツール類や作業着の形状や素材は、マスターによって異なることが多い。通気性優先、吸水性優先。ポケットの有無や位置。ヘッドセットの形状。デザインや色は本人の好みが色濃く反映される。
 とあるマスターは、作業着がどピンクだったとこで有名になった。本人曰く「やる気がでる」という理由でその色にしていたらしい。古参の名整備長から替えろと言われつづけたが、結局、どピンクから赤色に変更し、カチンときた名整備長と喧嘩にまで発展している。
 とあるマスターは、整備の時に必ず猫士を連れていた。ちなみにその猫士は整備はしない。マスターは猫士と喋りながら、猫士がにゃーにゃー言うのを聞きながら、ふんふんと作業をしていた。
誰かが「整備しない猫士だったら意味は…」と言おうとしたら、そのマスターが涙目で何かを訴えかけてきたので、言葉を続けられなかったという話…である。

 チューニングマスターは「合わせる」ことを何よりも最優先する。広い意味での効率最優先といっていいかも知れない。
体育会系なイメージの強い整備業界にあって、チューニングマスターが天才的で異質な存在感を漂わせている所以だろう。

文:沙崎絢市 絵:玲夢




西国人+猫妖精+チューニングマスター+名整備士

L:西国人 = {
 t:名称 = 西国人(人)
 t:要点 = 砂避け、日焼け対策された服装,エキゾチックな人材,灰色の髪→西国人より継承
 t:周辺環境 = 交易路,涼しい家,巨大な港,蜃気楼,オアシス→西国人より継承


L:猫妖精 = {
 t:名称 = 猫妖精(職業)
 t:要点 = 猫耳,尻尾→イラスト
 t:周辺環境 = なし


L:チューニングマスター = {
 t:名称 = チューニングマスター(職業)
 t:要点 = ヘッドセット,涼しそうな長袖→イラスト
 t:周辺環境 = クレーン→イラスト


L:名整備士 = {
 t:名称 = 名整備士(職業)
 t:要点 = 帽子,部下→イラスト
 t:周辺環境 = クレーン→イラスト