東雲ノ鎧

概要

 魔術によって構築・駆動される巨大な鎧、それが東雲ノ鎧である。それは騎士の鎧の延長であり、新たなる肉体とも呼ぶべきものである。
基本的には騎士が搭乗したが、素手格闘も問題無くこなせるため、軽装の拳法家にも使用できた。

 暁の円卓藩国の理力建築士達が主となって開発されたもので、帝國全土の騎士・拳士に愛用されたという。

 なお、上図に示すものは騎士用の全身鎧から構築したものである。

詳細

構造

基本的に人間用の全身鎧をスケールアップしたものであるが、魔術による産物であることと、人が着込むものではないためにいくつかの部分が異なる。

<一>:着用者によって自重を支える人間用の鎧と違い、それ自体で人型を保つような造りとなっている。
<二>:関節部分は機械的駆動装置を持たず、「浮遊」「念動」といった魔法を範囲限定で固定することによって駆動装置の代わりとしている。
<三>:胸部に操縦室を持ち、装着者一名が乗り込むことが出来る。内部には水晶板が配され、鎧の眼球(水晶球)で見た映像が投影される。
<四>:腕部・脚部・胴部の内部にはエネルギー源として魔晶石が設置される。

構築

 東雲ノ鎧は以下のプロセスで構築される。

<一>:着用者の鎧(人間用)を用意する。これに魔術的処置を施し、また胴、兜、脚甲、腕甲などから一部を削り取る。
<二>:原材料となる金属塊、皮革及び魔晶石6個、水晶球2個、水晶板1つ、飾り布を用意する。
<三>:材料の金属塊や皮革を「金属変形」「硬化」「軟体」といった魔法で変形させ、胴、手足を成形する。同時に内部に魔晶石が配され、魔力経路が構築される。ここで<一>で削り取った金属片あるいは皮革片を対応する部位に埋め込むことで、大小の鎧に感染魔術的な連携が生じる。
<四>:頭部を整形し、両眼の位置に水晶球を配する。「遠隔視」の術を固定化することで、この水晶球は眼球の役目を果たす。
<五>:胴内の空洞(操縦室)に水晶板を配置し、眼球からの映像を投影するよう調整する。また「盗聴」の術を固定化し、外部の音を拾う。
<六>:腕・脚・胴・頭を接続し、「浮遊」「念動」といった各部駆動に必要な魔法を固定する。
<七>:飾り布を配し、装飾を施す。なお、この飾り布も魔術的に強化された布であり、防具である。

 ここで重要なのは、固定される全ての魔法は機体内の魔晶石によって発動するということと、材料の入手は魔法や錬金術によらない、ということである。すなわち、東雲ノ鎧はその存在と活動に際して術者そのものは必要としないのだ。

稼働原理

 操縦者が<構築,一>で使用した鎧を着用して搭乗する。東雲ノ鎧は操縦者の鎧と魔術的に連結され、操縦者が鎧を動かすとその動きを再現する。操縦者の動きを直接トレースするのではなく、あくまでも鎧同士の同調である。現代風の言い方でいえば、鎧同士がマスター・スレイブの関係にあるといえよう。

 稼働用のエネルギーは機体内部に設置された魔晶石から得ているが、出力の調整などは出来ず、基本的には倍力(スケールアップそのまま)で固定されている。(正確にはしかるべき術者が乗れば出来ないことはないのだが、通常この鎧に搭乗する騎士は術者ではないだろう。)
 魔力の充填は逐次、従軍術者が行うことになる。

感覚器系

 搭乗者同調型の感覚器は一切搭載されていない。搭乗者に魔術的に直接連携して情報を伝えるということは取りも直さず「鎧と搭乗者の」間に魔術的同調関係を構築するということである。鎧同士の同調を基本として成立する本機では、それは極めて危険なことであった。すなわち、鎧の損傷が操縦者に跳ね返る(共鳴破壊)という問題が発生するのだ。このため、搭載する感覚器は完全に操縦者と切り離すことが要求された。
 そのためあまり複雑な感覚器は設置できず、「視覚」「聴覚」の2つのみに限定されている。

●視覚

遠見の水晶球を応用したもの。機体の「眼」に映ったものを操縦室内部に貼り付けられた水晶板に投影する。

●聴覚

鎧の頭部左右にそれぞれ「盗聴」の魔法が固定され、操縦室内に外部の音を伝達する。

特記

搭乗者の鎧による性能への影響

 本機においては、フレイザー効果によって共鳴関係にある鎧との間に感染魔術的な連携が生じる。即ち、搭乗者の着る鎧の性能がダイレクトに機体性能に影響するのだ。正確には相互共鳴となるので完全に騎士用の鎧を再現するわけではないが、鎧の強度・重量などが機体性能にフィードバックされるのは確かである。
 言い方を変えれば、軽装鎧……格闘家、拳法家といった者達が装着できる程度の鎧から構築した東雲ノ鎧は、それに合わせた性能、すなわち軽量・俊敏な機体となるであろう。 



搭乗者の動きを再現し、岩盤を砕く。
熟練の騎士が乗り込めば、竜をも斬ることが出来るであろう。

設定:GENZ 作画:猫野和錆